北海道屯田倶楽部
特集
子思孫尊2-1
ルーツ探しの旅をエッセイに
篠路屯田兵五世
見延 典子 さん
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先祖はなぜ北海道に渡ったのか―。篠路屯田兵の子孫でもある作家・見延典子さん(北海道屯田倶楽部会員)が、このほど紀行エッセイ『私のルーツ』を出版しました。副題にあるように「なぜ」という素朴な思いからルーツ探しの旅を始め、新たな発見や奇跡的な出会いを通して、三百年以上も前の先祖にたどり着くまでが、さまざまなエピソードを交えて綴られています。
日露戦争を時代背景に執筆へ
江戸後期が舞台の『頼山陽』に続く『敗れざる幕末』(二〇一二年)で幕末を、『汚名』(二〇一六年)で日清戦争を描いた見延さんは、次回作の時代背景として日露戦争に目を向けました。執筆の取っ掛かりとなる題材を探していたところ、出征の際に撮影したと思われる曾祖父の写真が札幌の実家に残されていたことから、本格的なルーツ調査に乗り出したそうです。
実家にあった軍装の曾祖父の写真
「札幌の中学か高校生時代に、先祖が屯田兵だったと聞いた」程度だった見延さんは、祖先が北海道に渡った理由を求めて、中山(井川)家が郷士として仕えたとされる蜂須賀(徳島)藩の史跡や旧・篠路兵村地区など屯田兵ゆかりの地を訪ね歩きました。そして調査が進むほどに、新たな疑問も湧いてきました。
「戊辰戦争における賊軍の立場や、稲田騒動とも関連した移住だったのだろうか」
「自然災害や飢饉が原因と考えても良いが、場合によっては故郷に戻って来る可能性を秘めての移住だったのではないか」
「屯田兵で二口応募する際に、名前を変え、年齢を偽ったのはなぜか」