北海道屯田倶楽部
特集
子思孫尊2-3
「一つ一つが宝物」
開拓遺産2千点が並ぶ記念館
―清一さんは移住百年碑を建てた昭和四十九年に自宅敷地内に、開拓期の農機具や生活用品を収蔵、展示する「三戸部記念館」を開設されました。これにはどのような経緯があったのでしょうか。
(写真は昭和30年ころの清美さん=中央=とご両親・三戸部氏提供)
―どのような方が訪ねてきますか?
「もう、さまざまですね。開設当初は、テレビ放送でも流され、大変注目を浴びたのを覚えています。現在でも年間二百人ほどになり、屯田兵の歴史を調べている人、子孫の方、大学の研究者や学生。それに発寒地区の小学生は毎年、見学にやって来ます。さきほどのクマや鮭のエピソードや、開墾の苦労話など、こちらも相手によっていろいろです。少し年配の方でも馬そりや千歯こきなど初めて見る人も多く、子どもたちに至っては、見ただけでは何の道具か分からず、説明を聞いてびっくりするといったこともあります」
まるで巨大なタイムカプセル
「先祖が使った物を大切にすることは、先祖の心を知り、郷土の成り立ちを知ることにもつながります。私は公務員務めでしたが、父のやりたいこと、やっていることは全てそばで見てきましたし、知っていましたから、記念館をそのまま引き継ぐことに何の抵抗も不安もありませんでした。私の長男はじめ家族も同じような考えだと思いますから、発寒の郷土記念館としてこれからも歴史を重ねていくと思います」
広さ約百三十平方メートルの記念館は、まるで巨大なタイムカプセルのようだ。しかし、過去へタイムスリップするだけでなく、そこに立つと、私たちの暮らしの現在を考えさせられ、やがて未来のことも思わずにはいられなくなる。不思議な街角博物館に、一度足を運んでみてはいかが――
(記・梶田博昭)
三戸部記念館
「三戸部記念館」は、札幌市西区発寒6条7丁目の三戸部さんの自宅敷地内にある。プレハブ平屋建で、よく見ると小屋組は琴似の屯田兵屋と同じ洋式の仕様がなされている。展示品は、奥に向かって左に農機具、右手に生活用具が所狭しと並び、その数およそ2千点。三戸部さんのガイドが必要だが、一つ一つ手に取って見ると、意外な発見もありそうだ。むしろが敷かれた囲炉裏端は、開拓期の屯田兵の生活空間を再現したもの。午前10時から午後4時まで開館、入館無料。12月中旬から3月末までは冬期閉鎖となる。見学希望は事前の予約が必要。予約・問い合わせは、電話011(664)1894。(写真は屯田兵入植当時にそば作りなどに使われた「ねり皿」)
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私設博物館長の琴似屯田兵四世
三戸部 清美 さん