北海道屯田倶楽部

特集

子思孫尊2-3

 


「一つ一つが宝物」

開拓遺産2千点が並ぶ記念館




 ―清一さんは移住百年碑を建てた昭和四十九年に自宅敷地内に、開拓期の農機具や生活用品を収蔵、展示する「三戸部記念館」を開設されました。これにはどのような経緯があったのでしょうか。


 「父は大変に歴史好きな人でして、三戸部家はもちろん屯田兵のことを中心に古い史料を集めたり、調べたことを文章にまとめたりしていました。この辺で発掘した先史時代の石斧(おの)や石鏃(やじり)も収集していました。仲間と一緒に作った『発寒郷土史研究所』の看板は、今も記念館に展示してあります。何よりも、農具や生活具にはそれらを手にした者の苦労の汗とともに開拓の思い出や家族の歴史が染みついている。一つ一つが宝物、という考えでしたから、残そうとしたのでしょう。私自身も、すり減った下駄スケートや竹スキーを手にすると、子供のころの思い出が鮮明によみがえってきます。どうしても捨てるに捨てられないからと、保管して欲しいと持ってくる方もいます。博物館のように珍しい物があるわけではありませんが、ここにはさまざまな品々とともに、確かにあった過去の記憶が形として残されているのです」

(写真は昭和30年ころの清美さん=中央=とご両親・三戸部氏提供)


 ―どのような方が訪ねてきますか?


 「もう、さまざまですね。開設当初は、テレビ放送でも流され、大変注目を浴びたのを覚えています。現在でも年間二百人ほどになり、屯田兵の歴史を調べている人、子孫の方、大学の研究者や学生。それに発寒地区の小学生は毎年、見学にやって来ます。さきほどのクマや鮭のエピソードや、開墾の苦労話など、こちらも相手によっていろいろです。少し年配の方でも馬そりや千歯こきなど初めて見る人も多く、子どもたちに至っては、見ただけでは何の道具か分からず、説明を聞いてびっくりするといったこともあります」


まるで巨大なタイムカプセル


 
―屯田兵の歴史的意義を広く知ってもらい、彼らの業績を顕彰するという目的で北海道屯田倶楽部も「語り継ぐ」ということを重視していますが、確かに形として存在する、見せる、さわらせるということは、大変にインパクトがあります。三戸部記念館は私設博物館ですから管理運営も大変かと思います。


 「先祖が使った物を大切にすることは、先祖の心を知り、郷土の成り立ちを知ることにもつながります。私は公務員務めでしたが、父のやりたいこと、やっていることは全てそばで見てきましたし、知っていましたから、記念館をそのまま引き継ぐことに何の抵抗も不安もありませんでした。私の長男はじめ家族も同じような考えだと思いますから、発寒の郷土記念館としてこれからも歴史を重ねていくと思います」


 広さ約百三十平方メートルの記念館は、まるで巨大なタイムカプセルのようだ。しかし、過去へタイムスリップするだけでなく、そこに立つと、私たちの暮らしの現在を考えさせられ、やがて未来のことも思わずにはいられなくなる。不思議な街角博物館に、一度足を運んでみてはいかが――

(記・梶田博昭)




三戸部記念館 


「三戸部記念館」は、札幌市西区発寒6条7丁目の三戸部さんの自宅敷地内にある。プレハブ平屋建で、よく見ると小屋組は琴似の屯田兵屋と同じ洋式の仕様がなされている。展示品は、奥に向かって左に農機具、右手に生活用具が所狭しと並び、その数およそ2千点。三戸部さんのガイドが必要だが、一つ一つ手に取って見ると、意外な発見もありそうだ。むしろが敷かれた囲炉裏端は、開拓期の屯田兵の生活空間を再現したもの。午前10時から午後4時まで開館、入館無料。12月中旬から3月末までは冬期閉鎖となる。見学希望は事前の予約が必要。予約・問い合わせは、電話011(664)1894。(写真は屯田兵入植当時にそば作りなどに使われた「ねり皿」)



 



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屯田編集部  
 
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  私設博物館長の琴似屯田兵四世

     三戸部 清美 さん