北海道屯田倶楽部

Book Guide

 

流刑地哭く

クリスチャン典獄と白虎隊看守長


 北海道の開拓史は、輝かしい面だけで語られることが多いが〝負の遺産〟を伴っていることを忘れてはならない。本書で著者は、道内の集治監などで囚人の生命・人権保護などに重要な役割を果たしたクリスチャン典獄・大井上輝前、白虎隊出身の看守長・狩野萩之進たちを描きながら、空知・釧路・樺戸各集治監等の設置経緯、囚人の強制労働が行われるようになった背景と実態、これが廃止になった経緯などを明らかにする。


 同時に、集治監廃止の少し前あたりから盛んになった、集治監の外―建設業界など―での〝監獄労働(タコ部屋労働)〟の流れや実態、中国人・朝鮮人の強制労働に至る流れなどを明らかにする。最近、郷土史家等の中で、こうした〝負の遺産〟を掘り起こし、世に問う動きが出て来た。こうした動きと照らしあわせると、余計この本の持つ「重さ」が理解できよう。

 「はじめに」の一節をご紹介します。           (O)

 一節抜粋


 強制労働は北海道開拓史上、消えることのない一大汚点です。そうした中でクリスチャン典獄がキリスト教教誨師を全集治監に配置し、囚徒の生命と人権の保護に努め、会津白虎隊出身の看守長がこれに協力した時期がありました。(中略)しかし、長州藩閥政権は不敬罪の罠を仕掛け、この典獄を依頼免に追い込み、キリスト教誨師は全員辞任せざるをえませんでした。

著:若林 滋

刊:中西出版

2012年5月発行

1,800円