北海道屯田倶楽部

Book Guide

 

開拓使にいた!

龍馬の同志と元新選組隊士たち


 北海道開拓使が設置されたのは、明治二(一八六九)年。戦乱の残り香がまだ漂う中、省と並ぶ中央官庁の一つとして発足した。近代国家を建設する上で、北辺の開拓と国防が重要課題とする明治政府の認識の表れにほかならない。開拓長官・判官には優れた人材が居並ぶが、本書では、数奇な運命を経て開拓使に出仕することになった九人の生涯が描かれている。第一部に登場する四人は、坂本龍馬と行動をともにした憂国の志士たち。北垣国道は、いち早く蝦夷地開拓を論じた盟友・龍馬の夢を追い求めるように開拓使入りし、後には北海道庁長官にまで登り詰めた。屯田兵創設に関わった大山重、医師として務めた山本洪堂など、埋もれかけた人物にも光が当てられている。

 第二部の五人は、龍馬らと対峙した新選組の元隊士らで、歴史の表舞台から見ると無名の存在。開拓使ではビールの醸造や果樹栽培、養蚕などの産業振興を支えたが、前半生は維新という時代の波に翻弄され続けた。そんな彼らがどんな経緯で開拓使に出仕することになったのか?その答は、是非ご一読の上、お確かめください。

(K)

 一節抜粋


 北垣(国道)はこのていどの事業で北海道拓殖を全うすることはできないが、ともかくこの計画が実行されれば、水陸運輸の便が拓けて石狩の以東、以北も排水により〝沃野〟に変わり、年々、十万の移民を迎えることができる。しかも実業教育を施して町村自治の基礎を立て、布教を盛んにすれば、やがて「北海道ニ君子国ヲ生ズベシ」と強調した。

(第一部 坂本龍馬の同志たち)

著:北国諒星

刊:北海道出版企画センター

2012年5月発行

1,600円